『仮想通貨の教科書』 はじめに
『仮想通貨の教科書』の はじめに-ビットコインに至る長い道 を読んだのでメモ。
はじめにでは、ビットコイン(仮想通貨)が開発されるまでに多くの失敗が歴史的にあったということについて書かれている。
我々一般人には突然ビットコインやブロックチェーンという技術が現れ、何がどう便利なのか、今ある電子マネーとはどう違うのか、など多くの疑問を持っている人が多いと思う。
この本のはじめにを読むとビットコインができるまでに多くのオンライン決済の仕組みに関して学術的にも取り組まれ、実ビジネスでも生まれては消えていったことが詳しく書かれている。
1989年にDigiCashという電子マネー ecash を開発した会社があったらしい。このecashはアメリカでは数行の銀行が対応し取引の承認、送金ができるものがあった。
しかし、ecashは銀行や販売業者を説得し利用してもらう必要があったのだが、販売業者が乗ってきてくれなかったためにクレジットカード会社がこの戦いに勝利し今の形となった。
ecashの特徴は「利用者」と「販売業者」の間の取引に特化していた点である。
ここが現在のビットコインとの違いで、ビットコインでは「利用者」と「販売業者」という区別がなく、一般の利用者も販売業者のようにビットコインで買ってもらえる商品の販売ができる。
この違いがビットコインの成功に役立ったひとつの点のようだ。
この「はじめに」の部分で一番気になった話は「Hashcash」の話である。
デジタルの世界では簡単にコピーができるために「希少性」というものを作ることが難しい。
デジタルの世界で「希少性」を実現するための一つの方法として、解くために時間がかかる計算問題(「パズル」)が解く必要があるようなシステムを設計することが考えられる。
この計算パズルを暗号学者のCynthia DworkとMoni Naorが1992年にスパムメールの削減のために利用することを提案していた。
メールを送ろうとする度にコンピュータが解くために数秒かかるパズルの1つをクリアしなければいけない、という仕組みを考えた。
この仕組みによってスパムを送る人は大量のスパムメールを送るためには大量の計算をしなくてはいけなくなるためにスパムメールが送りにくくなるというものだ。
しかし、上記のHashcashはスパムメール防止という目的では流行らなかった。
それは、スパムメールがそこまでして解決しなければならないほどの大きな問題ではなく、またスパムメールの多くがボットネットという他人のコンピュータを利用するケースが多くあったため利用されなかった。
この「Hashcash」というアイデアは現在のビットコインでもほぼ同じ計算パズルを利用している。
「はじめに」の最後にはビットコインの作者「サトシ・ナカモト」についての考察が書かれている。
サトシ・ナカモトはいつビットコインの開発に取り掛かり、「Hashcash」などの先行のアイデアから影響受けてきたのか、何が動機だったのか、ということに関して議論がなされている。
もちろんあくまで考察なので仮説なのだが、この部分を読むことでサトシ・ナカモト(ビットコイン)が何か特別なものではない、ということが理解できる。
2007年からコーディングを始め、フォーラムを通してブラッシュアップをしていく。
サトシ・ナカモトの設計にも現在考えると明らかに悪いと思われる部分(IPアドレスにビットコインを送る)があったようだ。
この本の内容はコーセラ
の「Bitcoin and Cryptocurrency Technologies」で無料で受講することができる。
ただ、現在は日本語の字幕がないため、英語が堪能ではないと厳しい。
今後このブログで第1章暗号理論と仮想通貨入門、第2章ビットコインが非中央集権を実現している仕組み、と簡単なまとめを書いていきたい。